クリスマスイブに発売された 大ベストセラー「メモの魔力」。今をときめくSHOWROOM 前田裕二さんの著書で、単なるメモ活用術にとどまらず、メモを通して人生を変え、真に創造的に生きることの提案をする、社会を変えるくらいの勢いがある良書です。
その前田さんのメモ活用法のベーシックな流れは
1:具体的な事例を元に
2:その内容を抽象化して
3:転用する
というものなのですが、これを読んで私がふと思い出したのは、坂本龍一さんがご自身の「戦場のメリークリスマス」を解説していた番組です。
坂本龍一さんはドビュッシーやラヴェルを愛好し、ご自身もドビュッシーに関する研究で本を出されていらっしゃいます。そして「戦場のメリークリスマス」は、ドビュッシーやラヴェル、ビル・エヴァンスといった作家のスタイルの影響を色濃く受けた佳曲です。
この戦メリの作曲技法を、「メモの魔力」の3ステップで考えると
1:具体的な事例
教授が注目した点は、クラシックだとドビュッシーやラヴェル、ジャズであればビル・エヴァンスの、浮遊感、型にはまらなさ、自由さ。
2:抽象化
独特の浮遊感を出しているのはこの点
→トニックの和音から曲を始めていない。(そのため調性が掴みにくい)
→11th、13thなどのテンションが使われている
→オープンコードが使われている
3:戦メリへの転用
→トニックの和音ではなく、サブドミナントであるGbから曲を始める。
→Ebから始まるメロディに対して、Ebのコードをつけず、メロディが13thになるようコードを設定する。
→テーマはオープンなヴォイシングで浮遊感を出している。Bメロは逆にクローズドで対比させる。
こうして「戦場のメリークリスマス」という作品が世に生まれ大ヒットしたわけですが、その影にはこのような抽象化があったのだ、と言うことに今更ながら気づきました。きっと一流のアーティストは、意識せずともこのプロセスを踏んでいるのかもしれません。
このように、ある特定のアーティストやスタイル、技法をリスペクトしつつ自分の作品を作っていく時に、この「メモの魔力」の「抽象化」の3ステップをはっきり意識して使っていくことは、かなり有効なのではないかと思いました。自分がどこにグッときているのか言語化して抽象化する。なぜグッときているのか原体験まで掘り下げる。その作業だけでも自分の創作世界が深いものになりそうです。
このblogを訪れる方は、作詞作曲をされる方も多いと思います。この「抽象化して作品に落とし込む」という技法で、お客様の作品からさらに多くのメガヒットが生み出されることを祈っております。
「メモの魔力」は、ライブラリーにございます。是非ご参考に、2019年の素晴らしいスタートを切ってください。皆さまの新年が素晴らしいものになりますように。